平成13年1月29日に実施した定期試験の講評です。(2001/02/28 垂水浩幸)
- 受験者 25名 (M1)
- 合格者 18名、不合格者 7名
- 合格者の平均点 76点。最高点98点。
以下、赤字が問題文です。
第一問
グループウェアの初期の研究例は技術指向で進められたものが多いが、研究としては面白くても実際には有効に利用できなかった技術がある。そのような例を一つ取り上げて説明せよ。
講評
- 教科書 6.2.2節参照
- VideoWindow と Cognoter に関する答案が多かった。
- 具体的にどの技術の例のことを指しているのかわからない答案があった。
- 利用できなかった理由として「コストが高い」のように研究者自身が承知していたものを挙げている答案が若干あった。問題文に照らせば間違いとは言えないので小規模の減点にとどめたが、問題の意図とは異なる解答である。
- 研究例の技術説明に終始し、なぜ有効に利用できないかに全く言及しない答案があった。
第二問
以下の用語や概念のうち、任意に選択した5つについて知るところを簡潔に説明せよ。
(a) ユーザ参画型設計
- 教科書5.6節参照
- 通り一辺の説明(ユーザの意見をとりいれた設計)に終わっていた答案が多く、アメリカとヨーロッパの立場の違いなどにまで踏み込んだ答案は見られなかった。
(b) (グループウェアで取り扱う)インフォーマルコミュニケーション
(c) コミュニティコンピューティング
- 教科書2.15節参照
- これも比較的よくできていた。
(d) WfMC
- 教科書3.1.2節、3.1.4節参照
- 標準化団体だということはよく書かれていたが、WAPIについて言及しているものが少なかった。
(e) Steve Benford らが定式化した仮想空間のアウェアネスモデル
- 教科書2.5.5節参照
- 一般的なアウェアネスの説明をしたものがあった。
(f) Production Workflow
- 教科書3.1.5節の(2)参照
- 一般的なワークフローの説明をしたものがあった。
- 「工場生産のためのワークフロー」のような誤った答案があった。
(g) CSCL
- 教科書4.1.1節参照。
- 「計算機を用いた教育支援」がCSCLである、という誤った答案が多くあった。学習者同士の協調が必要である。
- CL の C は Collaborative であり、Cooperative ではない。
- なぜか、「CAI の後継」という立場の答案が多くあったが、必ずしも後継とは言えない。
(h) ethonographic approach
- すみません!タイプミスで綴が間違っていました。ethnographic approachです。(採点では考慮)
- 教科書6.4節参照。
- おおむねできていました。
第三問
一つの文書を遠隔地に分散した二名のユーザが並行(編集操作権を一名のユーザに限定せず、両者に同時に編集操作権がある状態を意味する)に編集する場合、通常は編集操作のインタラクティブ性を向上させるために、各サイトでローカルに編集対象文書を保持し、編集操作内容を通信しあって、互いに文書の矛盾が生じないようにする。また、編集操作の取消(undo)も効率良く行うために、各サイトで編集履歴も保持して管理する。
このような環境におけるundo 操作について、その考え方、生じ得る問題等について知るところを述べよ。
- 教科書2.7.3節参照
- 以下二点の説明が期待した解答
- グローバルアンドゥとローカルアンドゥの説明
- グローバルアンドゥで起こりうる問題またはローカルアンドゥで起こり得る問題のいずれかまたは両方の説明
- 編集するユーザの間の意志疎通の問題を指摘した答案があったが、これはundoに限らず分散編集作業一般に生じる問題であり、問題の意図にそぐわない。
- その場で考えたと思える答案も比較的あり、できている答案とできていない答案の差が激しかった。