卒業論文、修士論文

執筆上の注意事項メモ

last update: 2014/02/11

想定読者

この分野の一般的な技術者を想定し、その人達が読んでわかるように書かなければいけません。講義のレポートとは違うので、指導教員が読んでわかるものを書けばよいというのではないのです。

一般的な技術者とは、例えば、他大学の情報関係の学部を卒業した程度の人で、 新聞・雑誌の技術記事くらいは多少読んでいて、一般的な技術動向については把握している人と考えれば良いでしょう。

例えば、我々ののこれまでの研究経過を知らないと理解できないという書き方はいけません。また、ごく狭い分野で使われている専門用語も説明をしなければいけません。 ただし、全部を説明する必要はなく、詳細に関しては適宜参考文献を引用してください。

香川大学付近で実験を行ったことに関して記述する場合、ローカルな地理的な知識がないと理解できない、というのも不適切です。

書いた文章が、第三者が読んでわかるものかどうか、特に自分達(研究室内)が内輪で使っている言葉が使われていたり、自分達が前提としていることの説明を省略していないかどうか、よく確認してください。

自己アピールや努力の記録ではない

論文は、自己アピールではありません。また自分がこの研究をするのにどんなに努力したかを記録したり主張したりするためのものでもありません。技術論文は、何かのテーマについて客観的な議論を行い、何らかの結論を示してそれを世に問うものです。したがって、原則として客観的な記述に終始しなければなりません。良くない記述例(実際に過去の学生の下書きにあったもの)として以下のようなものがあります。

~な結果が得られたので良かった。

「~ので良かった。」には良い結果が得られたことに対して自分が嬉しかったなどの気持が込められているようなニュアンスがあり、論文としては違和感があります。主語は明示されていませんが、良かった(と思った)の主語はおそらく筆者自身でしょう。「~という良好な結果が得られた。」と書かれていれば、良好なのは結果であるということが明解であり、客観的な文です。(もちろん結果の良好性が証拠等により客観的に理解できることが前提です。)

他に、自分の努力が足りなかった、自分が努力したので良かったなどの内省的な文章も書いてはいけません。努力不足があるような場合であっても、実験のプロセスに改善の余地があるという立場で、プロセスを客観的に論じるような書き方にすべきでしょう。

客観性を保つ努力をすることは、文章の読みやすさにも影響します。書くときには、自分の頭の中にあることを文章として吐き出す(=自分はこれだけやったのだということを教員にアピールする)のではなく、想定読者の白紙の頭の中に書き込んで行く(=想定読者に理解させる、理解可能な文を書く)という意識を忘れないことが大切です。このように書くには客観的な立場に立つように心がける必要があります。

ただし、(外部発表論文ではなく)卒業論文の場合、自己アピールする面が多少あっても良いと思います。しかしその場合であっても、豊富な実験データを付録につける、実験に要した時間をデータとして示すなどの客観的な記述の中で間接的に努力を表現する、また反省事項等は最終章の最後にまとめて書いて内省的な部分を明確に区分する、などが条件になると思います。

主語

論文の主語になる言葉は、基本的には「我々」です。卒業論文、修士論文の場合は自分のやった仕事についてまとめるものであり、共著者はいませんが、それでも「我々」を主語にするのがこの分野では通例です。(他の研究分野では異なる場合があります。)「本研究では~した。」「本論文では~について述べる。」のように主語を省略する書き方はもちろん可能です。なお状況により自分一人が主語になる場合は、「筆者」を用いてください。「私」は使いません。

英文の場合も同様で、主語は基本的に we です。自分一人が主語になる状況では the author を使い、決して I は使わないでください。 また英文ですので主語は省略できません。

ときおり、主語あるいは目的語を省略しすぎの文章を見ることがあります。例えば、「○○機能が新たに実装された。」ではなく、「本システムには、○○機能が新たに実装された。」にするなど、日常の文章よりも主語や目的語の省略を避けることを意識して書きましょう。

概要

論文の最初につける概要には、研究の目的、実施した内容、成果・評価がわかるように書いて下さい。研究の背景(研究室の先輩の仕事も背景のうちです、比較対象になる「関連研究」ではないので注意)と目的しか書かれていないケースが散見されます。成果(何がわかった、評価した結果どうだった)まできちんと書いて下さい。概要は序論とは違います。

学科・専攻で要求している概要の量は半ページ程度ですが、本来はその倍くらい書いて欲しいところです。

執筆の順序についてのコメント

  1. 最初に、目次や全体の構成を指導教員に説明して、確認してください。
  2. 参考文献リストは、本文の執筆が終わってからまとめて作成するのではなく、むしろ最初に作成してしまってください。これは、論文の位置付けを早期に明らかにするとともに、指導教員が原稿を読む際に背景を確認できるようにするためです。少なくとも添削に出す際には、執筆部分の参考文献リストは必ず揃っているようにしてください。
  3. 上記の注意事項が守られて入れば、あとは書きやすいところから書いて構いません。

文体

付録

見出しの設定

参考文献の書き方

例えば、電子情報通信学会の論文執筆マニュアルの 2.6.1 文献のリスト法 や、 情報処理学会の論文執筆マニュアルを参考にして、書式は統一し、細部まで厳密にやってください。どれを参考にしたら良いか迷ったら、とりあえず情報処理学会のを真似してください。 (これらを参照しなくても、既存の論文を見ればだいたいわかると思います。 自己流の書式はだめです。)

関連研究が複数の論文を発表している場合、査読されていないもの(全国大会、研究会等)よりも査読されているもの(論文誌、国際会議等)を優先して掲載してください。研究室の先輩の仕事を参照する場合、対外的に発表されている論文を卒論・修論よりも優先して掲載してください。

ウェブページを参考文献に挙げるのは、同内容の記事が雑誌や論文誌に掲載されている場合は、避けてください。理由は、ウェブページはいつ内容が変更されたり、アクセス不能になるかわからないからです。

やむを得ずウェブページを参考文献にする場合は、

を書くと良いと思います。→ これについては、情報処理学会でも書き方の指針を示しました。情報処理学会原稿執筆案内を見てください。

なお、すべての参考文献が、本文中(付録含む)のどこかから必ず参照されていなければいけません。また、図表に他の文献のものを引用する場合は、本文とは別に図のキャプションにおいても出典を明示してください。

また最近目につくのが、関連研究を紹介するだけで、卒業研究等との差異が何なのかを全く説明していないもの。これでは紹介している意味がありません。関連研究紹介は、卒業研究の他と異なる特徴について示すことが目的です。

参考文献の短縮形

例えば卒論の発表用レジュメは2ページしか書けませんが、そのときの参考文献の書き方 について注意します。

短縮する方法
(1) 文献の著者名は、フルネームでなく、姓だけにする。また人数が多いときは 筆頭著者のみ示す。(著者名の省略は失礼なので決してやってはいけないという主張をする人もいますが、紙幅制限のきつい場合はやむを得ないと私は考えます。)


佐々木一郎、香川考司、垂水浩幸 → 佐々木、他
Okada, M., Yamada, A., Tarumi, H., Yoshida, M., and Moriya, K. → Okada, et al.:

(2) 雑誌名等は省略形を用いる。
Proceedings of International Symposium on Principles of Software Evolution (ISPSE 2000) → Proc. ISPSE 2000

情報処理学会第49回グループウェアとネットワークサービス研究会, 2003-GN-49 → 情処49回GN研
又は → 情処研報、2003-GN-49

香川大学工学部信頼性情報システム工学科卒業研究報告書 → 本学科卒研報告

なお、場所に余裕がある場合は、なるべく略しすぎないようにしてください。上記の例は最も省略した例であり、中間段階もありえます。卒業論文、修士論文の本文では短くする必要はないので、国際会議の名前は略称だけでなくフルネームを記載してください。

省略の仕方がわからないときは個別に相談してください。

商標

いちいち、どれがどこの商標と書かなくても、 「本論文中で使われているシステム・製品名は、一般に各社の商標または登録商標です。」 とどこかで一言書いておけば、一応大丈夫です。

句読点等

一般に、日本語の原稿では、半角の , . (カンマとピリオド)は用いません。 コロンやセミコロンも同様です。
英語の論文を引用する場合のように、英語の部分には半角を使うことがあります。 その場合、, . : ; の後ろには、必ずスペースが必要です。
これは、英文タイプを習うと必ず指導されることです。 英文論文の書き方についてのレジュメも必ず参考にしてください。

日本語の原稿では全角の「.,」を用いる場合(情報処理学会論文誌など)、 「、。」を用いる場合(本を書く場合など。私はこれを使うことが多い。)、 さらに、出版社によっては「、.」あるいは「,。」(文部科学省書法)を 指定して来る場合があります。 卒論ではどちらとも決められていませんが、統一してください。本文で使ったものを参考文献リストでも使ってください。 全角のカンマ等を使う場合は、後ろにスペースは要りません。

なかぐろ(又はなかてん)「・」の使い方について

http://www.koho.or.jp/useful/words/na.html#na
などによれば、「東京・名古屋・大阪」のように名詞を列挙する場合に使う、 とされていますが、技術文書では一般にその使い方は避ける傾向にあるようです。

http://www.yamanouchi-yri.com/yrihp/techwrt-2-4s/t-2-4s07a-2.htm にあるように、外来語の単語の切れ目で使われる程度です。
例えば、「バチコフ・ガンチョ」のような人名の途中で使う例や、上記の ページにあるように「ピア・ツー・ピア」のような例外的なものがあります (これもできるだけ避けます)。

「東京・名古屋・大阪」のようにそれぞれの名詞がよく認知されているもので あればそれぞれ別のものだと読者は認識できますが、「バチコフ・ガンチョ」 を読者がまだ良く知らない状態で読んだとすると、バチコフ・ガンチョが一連の言葉なのか、バチコフとガンチョが別の言葉で列挙されているのか、区別で きません。このような理由で、なかぐろを列挙で使うのは避けた方が無難です。列挙する場合には、原則として「、」(英文の場合は , )を使用してください。(学外の方への注:バチコフ・ガンチョ氏は香川大学の先生です。)

体言止めについて

最近の学生の作文で目に付くのが、体言止め。体言止めとは、「~を開発した。」と書くところを「~を開発。」などとするものです。日本語として間違いではないのですが、文章として雑な印象は否めません。スペースの限られた新聞記事のような文章でない限り避ける方が良いでしょう。

英語について

香川大学工学部、大学院工学研究科では平成16年度の卒業論文、修士論文から、英語のアブストラクトも書くことになりました。英語については、昔作った資料があります。垂水の担当した技術英語の講義を受講した人はそのときの資料も参照してください。

図表の配置方法、およびMS-WORD で論文作成するときの図表の配置のコツ

図表は、必ず本文から参照してください。図表は、参照されている本文からできるだけ近い位置に配置してください。ただし、参照位置のすぐ下でなくてはならないということではありません。基本的に同じページか、それが無理ならば次のページなどに配置されていれば構いません。図表の配置の影響で余計な空白がページにできることは避けてください。また、図表の上や下に1~2行の本文が残ることも避けてください。図表はページの一番上または下に配置しておくと無難です。

LaTeX で論文作成をすると、図表の位置が本文から離れてしまうことが時々あります。注意して配置してください。

WORD 利用のコツをこちらのページに記述しました。参照してください。(旧版のWORD2002用はこちら

謝辞

謝辞は、指導教員(副査含む)、研究室メンバー(ゼミでの議論その他で協力を得ているはず)、外部資金プロジェクトに関してはスポンサーについては原則書いて下さい。筆者の気持で書くものですから、それ以外の方(例えば家族)への謝辞もそれぞれ考えて書いてもらって結構です。

添削を受けるとき

紙で添削を受ける場合、二度目以降の添削では、前回の添削を受けた(赤入れされた)原稿も合わせて提出してください。教員は多数の学生の論文を並行して添削するので、どんなコメントをしたのか覚えていないのが普通です。ただしメール添付のファイルでやりとりされている場合は前のものが残っているので大丈夫です。(最近は PDF コメント機能を使って添削していますので、PDF を送って下さい。その際、Adobe の純正ツールを推奨します。理由は文字列選択してのコメントが確実にできるため。Word による PDF 保存ではこれができないことが多い。フリーのソフトで PDF 化する際も文字列選択ができるのか確認してくだい。)

また、ファイルで提出する場合は、ファイル名に日付を入れるなどして、バージョン毎にファイル名が変わるようにしてください。

その他

2013年3月7日、情報処理学会全国大会企画イベント企画「論文必勝法」の講演「論文のイロハ」の資料 (web公開用に補足・修正してあります)も参考にしてください。

参考になる資料